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山下甫「作曲家・松下真一と過ごした音楽日記 電子音楽編」

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engine books - difference 2024年2月28日発行 52頁


作曲家・松下真一と過ごした音楽日記 電子音楽編(2023年)

付録 = 山下 甫「電子音の音楽性、又はその可能性」(1965年)


1944年生まれの山下甫は、10代のころから関西の作曲家である松永通温や松下真一から作曲を学び、日本における本格的な電子音楽スタジオがNHKくらいにしかなかった1960年代に、プライベートの電子音楽スタジオを設立していた人物である。さらに山下は「アート・チクルス現代音楽同人会」を組織しており、機関誌「チクルス」の発行のほか、レコード・コンサートや会員の作曲した作品を発表するコンサートなども開催しており、美術家の今井祝雄はアート・チクルスのコンサートを聴きに行ったことがあるという。

本冊子「作曲家・松下真一と過ごした音楽日記 電子音楽編」は題名の通り、山下が松下真一から電子音楽の作曲を学んでいた日々の日記をもとにして書かれた記録的な文章が収められている。松下真一と毎日放送で行ったセッションの記録写真などが掲載されているだけでなく、松下真一の紹介で1965年に山下がNHK電子音楽スタジオを訪問した際に、技師の塩谷宏らと交わした会話の記録なども収められている。

さらに、機関誌「チクルス」に3回にわたって掲載された「電子音の音楽性、又はその可能性」という1965年の文章も付録として収録している。こちらの文章は山下がNHK電子音楽スタジオを訪問した際のレポートであり、当時のスタッフらがどのような考えのもとで電子音楽の制作にたずさわっていたかを垣間見ることができるだろう。なお、山下甫とアート・チクルス現代音楽同人会の活動については、以下の紀要論文を参照されたい(pdfをダウンロード可能)。

川崎弘二「アート・チクルス現代音楽同人会の活動」
◎情報科学芸術大学院大学紀要 第10巻 2019年3月29日発行 76〜85頁
https://www.iamas.ac.jp/iamasbooks/journal/journal_of_iamas_vol-10/


山下 甫:1944年3月大阪生まれ。1956年よりピアノを半田紀子に、作曲を大阪在住の松永通温氏に師事、対位法・和声学などを学ぶ。また、松下真一氏に師事し、電子音楽技法・数学的な作曲技法を学ぶ。1963年、アートチクルス現代音楽同人会を発足し、仲間数人と現代音楽演奏会・作品発表会を開催する。1965年、NHK電子音楽スタジオ(東京)にて技術主任より電子音のハード・ソフトの指導を受け、大阪でリサージュ電子音楽スタジオを設立。1966年、アンチミュージック宣言、「反音楽」の様式確立のため、アートチクルス作曲メンバーと共に作曲演奏活動に専念。1966年、大阪で第2回作品発表会を開催。ピアノのための「ファイノメノンⅠ/Ⅱ」、電子音のための「Resuscitation」などの作品を初演。1968年、京都で毎日新聞社後援「Zone」シンポジウムに参加し、ピアノとテルミンのための「ファイノメノンⅢ」など電子音楽の作品を発表した。そして、2022年には「電子音とパイプオルガンのためのダンテ神曲」を作曲し、Edition Omaga PointからCD「実験音楽グループ アート・チクルスの知られざる活動」が発売されている。

http://omega-point.shop-pro.jp/?pid=168669487

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